「児孫の為に美田を買わず」(不爲兒孫買美田)
西郷隆盛(南州)の有名な言葉の一つですが、これは西郷自身が詠んだ自詠句の結句部分になります。


「子孫のためにといって良い田を買わない事がそれである。」
「感懐」という自詠の漢詩、七言絶句の結句(4つめ)の部分になります。
幾歴 辛酸 志始堅 (幾たびか辛酸を経て 志 始めて堅し)
丈夫 玉砕 愧甎全 (丈夫玉砕して甎全(せんぜん)を愧(は)ず)
一家 遺事 人知否 (一家の遺事 人知るや否や)
不爲 児孫 買美田 (児孫の為に美田を買わず)
人の志というものは、幾度も幾度も辛いめ酷いめにあって後、はじめて堅く定まるものである。
そこで、真の男子たる者は、先ず幾多の辛酸をなめて志を堅くし、その堅い志を貫くためには、玉となって砕けることを本懐とし、志を曲げて瓦となって無事に生きながらえることを恥とする。
それについて、自分が家法として子孫に残しおきたいと思う事が一つあるが、それが何であるかを知っている人があるか知らん。
子孫のためにといって良い田を買わない事がそれである。
というように、激動の時代を生きた人ならではの詩と感じます。
美田を買わず〜の部分はとても有名で聞いたことがある方も多いかと思いますが、その前の3つの句、そもそも七言絶句の自詠句の結句部分ということはあまり知られていないのではと思います。
前の3つの句を通して読むとまた印象も違ってくるかと思います。
そしてこの有名な句を西郷隆盛自身が書いたものがこれ、

よく鹿児島の家では床の間に掛けてあるものですが、この感懐の自詠句を自分の字で書いたものです。
西郷さんの人柄や気性が感じられる力強い書です。
私もこういった事をやりたい…ということで、地元の書道発表の場もあるということで、有名な結句の部分を隷書で書いてみました。

自分の考えやおもいを漢詩で詠んで、それを自分の字で書す。
江戸漢詩というジャンルもありますが、当時の教養人は当たり前にこういったことをやっていたようです。
単に字を書くだけよりもはるかに、いや別次元で修めなければならない事も多いですが、拙くともやっていきたいと思います。
まずは有名な西郷隆盛の言葉を隷書で書いた作品、ということでここに記録を残しておきたいと思います。

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