「印刷」と「手書き」の字はフォントの違いがあります
今回は、「印刷の字」と「手書きの字」には微妙に違いがあります、というお話です。
美文字への道は、ここを分かっているだけでもずいぶん違ってくると思います。
まずはこちらをご覧ください。
まずこちらの記事でお話しましたが、漢字の書体に「楷書」と「行書」があります。
続いて、「印刷の字」(いわゆる活字)と「手書きの字」
を表にまとめてみました。(「美」という字の場合)
ここをご覧になっている方で、美文字トレーニングなどされている場合に、
普段は「印刷の字(特に教科書体)」を見たりなぞったりで練習されている方もいるのではと思いますが
よくよく見てみると、この「美」という字ひとつとってもフォントに微妙に違いがあります。
楷書には「印刷」と「手書き」の微妙な差がある
これはそれぞれの「表現の差」「デザインの差」のいわゆる「フォントの違い」ということになります。
ここでは、「印刷の字」ではよく使われてメジャーな
・「明朝体」
・「ゴシック体」
・「教科書体」
の3つを挙げました。
「字の骨格」や「つくり」自体は、もちろんまったく同じです。
この「美」の場合、一番の違いは「ヨコ画の長さ」です。
「美」の字はヨコ画が4本ある字ですが4本目がフォントによっては短かったり長かったりしています、
でもこれ、実際のところどっちでもいいんです。どっちも正解です。
ところで、「印刷の字:教科書体」ですが、これは学校で教える場合もこの書体(フォント)で指導しているそうです。
なぜかというと、「手書きの字に近いから」(たぶん手書きの字に似せてデザインされたフォントなのだと思ってます)
おそらく美文字練習帳などの「印刷の字」もこの教科書体が多く使われているのではと思っています。
では、続いてこちらをご覧ください。
「森」という字の「印刷の字(教科書体)」と「手書きの字」です。
この字は「木」を3つ書きますが、
「印刷の字(教科書体)」は「1つめの木」の右払いを払っています。
一方「手書きの字」は右払いを止めています。
ここが違っています。
楷書の慣習(伝統のある美文字の書き方)
この記事を読んでいる方には、ぜひ覚えていただきたいことに
「楷書の慣習」というものがあります。
これは、「伝統のある美文字の書き方」とも言えますが
「楷書」という書体ができてから1700年以上の長い長い歴史の中で磨かれて編み出されてきた
「手書きの楷書の美しい書き方」
「書きやすくて、しかも美しさを追及した書き方」
です。
たとえばその書き方のひとつ(慣習という、昔からこう書きましょうかねという決まりごと)に、
「ひとつの字の中で右ハライは一箇所だけ」
というのがあります。
これをふまえて、さきほどの「森」という字を見てみると、
ということになります。
そして書道の字典にはあらゆる時代の楷書が載っている(もちろん全部手書き)のですが全部が例外なく「右払いは一箇所(片方は止めて、もう片方は払う)」でした。
私が思うに何事もそうですが、同じことって繰りかえすとクドくなりますよね…
音楽の歌詞や音程でも、繰り返す所は必ず変化をつけるのと同じだと思います。
なのでなるべく変化をつけるため、そして見せ場(この場合は右払い)は一ヶ所の方が引き立つしカッコイイと思います。
映画とかと一緒で「主役」と「脇役」をきっちり分けることが大事だったり、オンオフの切替えだったり、メリハリをつけるのが大切なのと同じなのだと思います。
まとめ
- 「印刷」と「手書き」の字はフォントとしての違いがあります。
- 「印刷の字」に教科書体があり、学校もこれで教えてます。
- 「楷書の慣習」という、伝統のある美文字の書き方があります。
ということになります。
私の意見ですが、「印刷の字(教科書体)」での練習も良いとは思いますがなるべくなら「手書きの字」で練習していただきたいです。
そして「印刷」と「手書き」の表現の差を分かって日々の練習に励んでいただきたいと思います。
いずれは、この美文字の極意のひとつと考える「楷書の慣習」というのをまとめた記事も書いていきたいと思いますのでその際に読んでいただければ、美文字にまた一歩確実に近付けると思います。
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