文字を書く、
という事の本質を理解するために、
もしも機会があるなら、彫刻刀で木版などに文字を掘ってみる事をぜひ薦めたいです。
小学校の時などに版画などの授業でやった経験があるかもしれませんが、
おそらくV字の形をした彫刻刀で掘ることが多いと思います。
絵でも字でも、細い線を出す事のできるV字の彫刻刀。
その細い線を掘り書く時に、V字の一番下部分を使って書くと思います。
芯の部分を使って掘るわけですが、
芯を喰って掘る(書く)感覚
というのをぜひ感じて味わいながら行ってみてほしいと思います。
彫刻刀で掘ると自然とその線の中心が一番深くなります。
彫刻刀の刃の一番効く部分=筆の毛の一番長い部分(命毛といいます)
となりますが、
その一番深い部分を、筆の命毛が通るように書く
この掘る感覚と、命毛中心はまったく同じことであり、
同じにしなくてはいけなくて、書の中で一番外してはいけないポイントになります。
ここを出発点にして、
「どうすれば命毛中心になる線を引けるか?」
という事から始めることが、長い書の道への正しい入口だと、
30年以上書をやってきて痛感することです。
この入口を間違えたままだと、いくら形や造形・デザインを工夫しても
こと書においてはまったくの徒労に終わってしまいます。
本当に気をつけるべき、書の指導者が一番教えるべき事だと思います。
そのための彫刻刀で掘る事のススメでした。
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