【木2画目ハネるとバツ?!】「字体」と「字形」の違いをご存知でしょうか…?

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木の2画目はハネるとバツ?!→ハネてもハネなくても正解です

あなたは小学校の時など、漢字テストの時などで

「木の2画目をハネたらバツにされた」という経験はないでしょうか?

まず、はじめにハッキリと申し上げたいのですが、

木の2画目は、ハネてもハネなくても、どちらでも正解です。

どちらも正解

なのでハネたらバツというのは、単純にまちがいです。

しかし昔からこの問題や混乱はあって、しかも根が深いです。

この記事の話は、私も長年思うことがあってずっと考えておりましたが、

今回この記事でその問題と混乱について、それに対する解決の考え方についてお伝えしたいと思います。

そもそもなぜ、こういった事になっているのか…?

昔からあると言われているこの問題や混乱、

私が感じて思うこともふくめて、まずこうした事が考えられます。

・漢字教育ではいろんな書き方がOKという正解の「ハバ広さ」が先生を困らせている。

・先生(公務員)は書かれたモノの通りにするという仕事上の性質がある。

・てっとり早く「教科書体フォント」を基準にすることもある。

などなど、他にも先生の主観・経験から指導しているとか、いろいろありますが、

おおむねこういったトコロだと感じます。

キーワードは「ハバ広さ」「お役所仕事」「教科書フォント」の3つです。

この記事を書いていて一番思うことは、そもそも「漢字を教えるのはムズカシイ」ということ。

小学校の、とくに低学年を教えられる先生方は感じておられることと思います。

人にモノを教えること自体がそもそもムズカシク簡単なことではないですが、

漢字教育はその最たるものの一つです。

しかも国語は5教科の中でも一番大事な教科であり、

間違いが許されないというハードルの高さも手伝っています。

それがこの問題や混乱の根っこにあるのだと思います。

正解の「ハバ広さ」が教えるのをムズカシクしている

漢字は6万文字あると言われます。

中国4千年とも言われるものすごく長い永い歴史の中からできたものです。

その中から「日本語として使いましょうという約1,000文字の漢字」を小学校で教えるのですが、

4千年もかけてできている漢字ひとつひとつに、いろんな書き方があります。

いろんな書き方ができてしまうモノですから、

「この漢字はこう書くのが正解です」の「正解」がたくさんあるわけです。

算数だと1+1=2ですが、

国語の漢字だと単純に答えである「2」の書き方がいっぱいできてしまう。

これが漢字教育のムズカシサを相当に上げています。

いざ漢字を教える側からすると、あまりにも答えの数が多すぎて、許容範囲が広すぎて、

おそらくは大学でもそこまで徹底して教えられているわけではなく、

混乱してしまい、後から述べます「てっとり早い根拠」にすがることも出てきてしまうと思います。

学校の先生=公務員という「お役所仕事」のツラい部分。。

学校の先生は、言うまでもなく公務員です。

私も教員ではないですが、18年間、役所の職員として公務員をやらせていただいておりました。

だからこそ「お役所仕事」という皮肉のこめられたこの言い回し(よく言われました)はツラいですが、

元公務員だったからこそ言われるのも分かりますし、仕事の性質上、仕方ない部分もあると思います。

「お役所仕事」は「文書主義」でもありますが、ようは、

書かれたモノのとおりに仕事しなきゃいけない

わけです。

当たり前のことですが、警察官が交通違反をしてはいけないように、

法律を守るという「書かれたモノのとおりに仕事する」のが公務員です。

この「書かれたモノ」を漢字教育でも単純に使ってしまっていることも、

この問題を長らく複雑してしまっているのだとも感じます。

それが次に述べます「教科書体フォント」です。

「教科書体フォント」が便利すぎる…

「教科書体」というのはフォントの一つの種類のことです。

ここでひとつ説明させていただきたいのですが、

「文化庁」と「文部科学省」という、文化と教育の2つの機関があります。

超ざっくりいうと、

文化庁=日本の文化を守るトコロ

文部科学省=教え方を考えるトコロ

と言えます。(これだけではモチロンなくて、ほんとにざっくりですが…)

そして先に少し述べました

「日本語として使いましょうという約1,000文字の漢字」

というのは、

文化庁HP:常用漢字表

↑の常用漢字(じょうようかんじ)という、カンタンに言いますと、

「何万文字も漢字はあるけれど、たくさんありすぎてみんなが混乱するから、

一応、日常の中ではこの約2,000文字(2,136文字)を使うようにしましょう。」

というものが文化庁から示されています。

それから、

文科省HP:【国語編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説

学習指導要領(がくしゅうしどうようりょう)という、

学校での教え方のマニュアル(みたいなもの)が文部科学省から示されています。

この中で常用漢字の約半分の1,000文字(1,026文字)を、

小学校で教える教育漢字としています。(残りは中学校で教えます。)

この2つの機関と2つのマニュアル(みたいなもの)で、

学校(義務教育)で教える漢字の「数」と「教え方」が示され、これらを参考にして実施されています。

この「教え方」というマニュアル=学習指導要領の中に、

「学年別漢字配当表(がくねんべつかんじはいとうひょう)」

という、教育漢字を小学校の各学年ごとに振り分けた一覧表があります。

これを表記している書体=パソコン(印刷文字)のフォントが「教科書体」というものです。

この教科書体フォントを教える時の基準としてしまっていることが、問題の一つになっていると考えられるのです。

教科書体フォントの説明1

教科書体フォントの説明

「学年別漢字配当表(がくねんべつかんじはいとうひょう)」

↑↑この配当表のフォントが「教科書体フォント」といいます。

先に述べたように「お役所仕事・文書主義」は「書かれたモノ」を根拠にします。

その「書かれたモノ」=マニュアル=学習指導要領の中にこんな部分があります。

学習指導要領(国語編)164P

学習指導要領(国語編)164Pの一部抜粋

↑の中で2行目に”「学年別漢字配当表」に示された漢字の字体を元に指導”とあります。

とくにこの辺りをよく読まずに安直に「この文字で教えればいいんだな」

と考えてしまうと、まちがいが起こってしまいます。

しかもさらにやっかいさを増しているのが、

この「教科書体フォント」が手書き文字風にデザインされていること。

教育目的であえて手書きみたいに印刷文字をデザインしているため、

手書き文字の判定をする時の手がかり(根拠)にしてしまい、

もっと混乱してわけ分からなくなっている事に一役かっていると思います。

現代はモノ申す父兄が多いと聞きます。

私の実感としてもPTAの発言する力は相当大きい…と感じる事も多いですが、

そういった事にもお手軽に根拠として示せて対処法としても使えます。

「ココにこう書かれているから、こう指導しました。だからバツです。」

と言えて便利なモノなのです。(一応の説得力がありますから…)

この解釈を盾にしてしまっている事も、問題や混乱を長年ひき起こしている事になっています。

ですがそれは、文化・伝統を守る文化庁の考えからは間違ったものです。

問題や混乱のすべてではありませんが、この「フォントありきで指導」も一役買ってしまっています。

デジタル文字と手書き文字は違うという大前提で指導だけど…

デジタル文字と手書き文字は違う

という大前提があります。

(下記記事もぜひ参考にされてください。)

先に紹介しました、

文化庁HP:常用漢字表

のはじめの部分(前書き~)に、何やらいろいろと説明したものがあります。

その中に、一番はじめに取り上げた「木の2画目ハネると○か×か?の答え」が示してあります。

常用漢字表(付)字体についての解説(一部抜粋)

常用漢字表(前書き)からの一部抜粋

↑の赤いワクの中に、

「デジタル文字(明朝体)の「木」」ー「手書き文字の「木」が2つ」

示されています。

ようは、

「パソコンのデジタル文字はこう表記するけど、手書きする時の書き方はこれでもOK」

ということです。

これはほんの一部ですが、ほかにもたくさんあります。

この辺りが「正解はたくさんある」ことにもつながってきます。

例として示されているわけで、これを参考に指導・判定すべきです。

それはそうなのですが、いざ、生徒が書いてきた漢字が合っているか?そうでないか?はその先生の判断にゆだねられます。

そう、ゆだねられるのです…

ですが…

ぶっちゃけ、

「1,000文字以上もある漢字ひとつひとつに、いろんな書き方で正解があると言われても、判断しかねる…」

「てっとり早く「教科書フォント」で指導した方が、間違いではないしその方がスムーズにいく」

などなど…が、現実問題としてあるのだと思います。(学校の先生はホント忙しいですから…)

ですが、漢字教育として長年の問題や混乱となっているのも事実としてあります。

本当に根の深いこの問題と混乱、どうすれば良いのでしょうか?

そこで、文化庁からこの問題に対してもう一歩も二歩もふみこんだモノが示されています。

長年のこの問題・混乱への対策が、追加の参考マニュアルとして示されている

文化庁より、

常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)について

というものが公表されています。

文化庁としても長年のこの問題や混乱をなんとかしたいとの思いから、

200ページをこえるという、大変な苦労をされて出されたのだと思います。

内容はザックリと、

・「字体(じたい)」と「字形(じけい)」は違うということ。

・「デジタル文字」と「手書き文字」は違うということ。

・これらの違いをよく知らないから混乱が起きているということ。

・それらのQ&Aを用意しました。

・常用漢字(2,136文字)全部に手書きの例(あくまで例)を用意しました。

ということです。

200ページ以上もあるので読むのも大変…という方は、動画もございます。

↑約13分の動画です。要点を完結に非常に分かりやすく解説してあります。

常用漢字表のはじめの「前書き」や「例」として示していたものを、さらに深くほり下げて分かりやすく解説してあります。

とくに素晴らしいのは最後の方に、字形比較表という、

常用漢字2,136文字すべて、手書きの書き方の例が載っている。

ということ。

あくまで「書き方の例」ではありますが、漢字指導・判定をする上でとても役立つものには違いありません。

漢字の判定にてっとり早くこの例を参考にするだけでも結構なことなのですが

この指針でもそうですし、私としても一番伝えたいもっと大切なことがあります。

それが「字体・字形に関する指針」とあるように

「字体(じたい)」と「字形(じけい)」をきちんと理解することです。

「字体=骨」「字形=肉」、順番を理解すること

字体と字形はどう違うか?指針でも解説してありますが、

これはもうカンタンにいうと、

・字体(じたい)は「線の組み合わせ・骨組み」=「骨」

・字形(じけい)は「書きぶり」=「肉」

みたいなものです。

ようは、骨と肉です。

漢字教育では大前提としてこの「字体=骨組み」を指導・判定すれば良いのです。

骨をまずは教えれば良いのです。

漢字は線と線を組み合わせてできているわけで、その組み合わせ(=骨組み)が合っているかどうか?

を指導すれば良いし、判定すれば良いわけです。

「字形」という「肉の部分」をごっちゃにしてアレコレ考えてしまうから、

問題や混乱が起きてしまっているわけです。

ここで先ほどの「学習指導要領(国語編)164Pの一部抜粋」をもう一度見ていただきのですが、

習指導要領(国語編)164P

学習指導要領(国語編)164Pの一部抜粋

3行目に字体を元に指導とあります。

つまり「字体」=「骨組み」=「骨」の部分を指導しましょうということなのです。

ここが「まずは」の部分での漢字教育の必要最低限の部分、基本の部分であって、

「トメ・ハネ・ハライ」や「字の綺麗さ」はその上での、次の話になるのです。

ここの理解をごっちゃにしてしまうからいけないのです。

200ページを超える指針の中で、一番大切なポイントです。

指針すべてに目をとおしていただきたい(大変。。)ですが、

この「字体=骨組み」の考え方を押さえることがなによりも重要ですし、

ここを理解することがこの問題・混乱の解決の糸口になると思います。

「字体」と「字形」の考え方

「字体」と「字形」の考え方

「字体」と「字形」の範囲

「字体」と「字形」の範囲

まとめ

一番のポイントは、

・「字体(じたい)」と「字形(じけい)」の違いをしっかりと理解すること。

・この2つの範囲をよく理解して指導すること。

この2点に尽きると思います。

学校教育での最優先は、「字体(じたい)」という「骨組み」を徹底してまず教えること。

その上で「トメ・ハネ・ハライ」といった「字形(じけい)」に関係する部分は教養の範囲となり、

「いろんな書き方がある」という前提で教えることが大事です。

「国語」のムズカシサは「いろんな答え」があるということ。

複雑であるからこそ文化にまで昇華したとも言えます。

アルファベットに美しさの文化がそこまでないのはシンプルだから。

漢字に美しさの文化があるのは複雑だからです。

複雑でムズカシイ漢字、それを教えることのムズカシサ、

でもだからこそ美しい?美しくない?という領域まで高められた文化であるといえると思います。

長年のこの「漢字教育の問題・混乱」を私なりに解説してみました。

「一介の書道家が何を偉そうに…」と思われる方もいるかもしれませんが、

長年のこの問題に対して、また、文化庁が危惧されている文化・伝統の継承に関するこの問題の一助になれば幸いです。

文字は重要な文化遺産だと私も痛感します。

正しい指導とその上での教養が健全な社会・伝統の継承になると思います。

ひらがなを本気で綺麗になりたいあなたへ

田畑明彦

田畑明彦

在野の書家。字は誰でも綺麗になれる!という想いから分かり易い美文字法を発信していきます。書を始めて30年以上、脱サラして書で身を立てるべく京都の住まいから地元鹿児島へ戻りさらに奮闘中!書の勉強の果ての日本語を美しく書けるようになりたい!百聞は一見にしかず。動画にて美文字の解説しております。下↓のYouTubeボタンから、または「SYODOUGA」で検索下さい。

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