ひらがな「き」徹底解説
今回はひらがな「き」です。
ひらがな「き」は、ひらがな「さ」に1画プラスした字で書くときのコツは共通しますが、「さ」と同じくなかなかバランスの取りづらい字ですし、1画プラスの分ムズカシさもアップしています。
「き」の極意も、「さ」でも書いていますが、画と画が交差する部分を直角ぎみにする、3画目最後の折り返し部分をしっかり書くことです。
詳しくご説明&ご紹介していきます。
シルエットはタテのだ円形
まずはシルエットとしての全体像をとらえていただきたいのですが、
ひらがな「き」のシルエットは「タテのだ円形」
になります。
「き」は字のつくり的にタテ長になる字です。タテに長いだ円形のラグビーボールのようなイメージで書くようにすると良いです。
1画目・2画目は少し右上がりに
まずは1画目と2画目について、
「き」の1画目と2画目は「ヨコの画」になりますが、どちらも
ヨコ画は少し右上がりに書く
ようにすると良いです。
「き」はヨコの画を2本並べて書く字なので、どうしても右上がりがキツクなりやすいです。
右上がりがキツクなってしまうと、字としてのバランスもですが、文章としても一文字だけ右上がりのキツイ字があると全体のバランスがおかしくなってしまいます。
右上がり「6度」や「時計のハリ14分」にこだわりすぎる必要はありませんが、右上がりがキツクなりすぎないようにすることも大事です。(私もとくに心がけている部分です。)
1→2画目の「見えない画」を意識
1画目と2画目はカタカナ「ニ」を書くようなカタチになりますが、
1画目から2画目が「見えない画」でつながっているように書く
ことが大事です。
1画目と2画目がそれぞれお互いに呼んだら応えるような、呼応して見えることが、美文字の秘訣です。
要は「つながっているように見える」ということが大事で、つながりのあるペンの動きがないとそうなりません。
1画目を書き終わって2画目に移っていく時に、「気持ちを切らさないように」「ペンの動きを止めないように」を心がけて、紙ではなく空中に見えない画を書くようにすることが大事です。
3画目の前半は1・2画目と直角ぎみに交差
3画目ですが、「き」を書く中で3画目が一番大事な画です。
3画目は「前半」と「後半」に分けて解説いたします。
まず、3画目の「前半」は1画目2画目と直角ぎみに交差させる
ことがとても大事です。
1画目と2画目をそれぞれ交差するように3画目の前半は書いていきますが、この時に「直角ぎみ」に交差することを意識して書くと良いです。
「直角ぎみ」の「ぎみ」と書いたのは、厳密のこだわりすぎてほしくないからです。
なぜ、「直角ぎみ」というのかというと、直角ぎみで書くことで「紙の白い部分」がある程度、同じになってくるからです。
白い紙に黒い線を引っぱって字というのは書いていきますが、黒い線だけで字というのは成り立っていなくて、白いトコロと黒いトコロの組合わせで字というのは成り立っています。
実際に書いていくのは「黒い線の部分」なので、そればっかりに注意して、なかなか意識しないことですが、白い紙の部分がどう残っているか?で字がキレイか汚いかは決まってきます。
なので「直角ぎみ」を意識して書くことで、自然とひとしい白い部分というのができてきて、結果、美文字に近づけるということになります。
3画目の後半はきちんと折り返してハネる
3画目の「後半」ですが、
3画目の「後半」はきちんと折り返してハネる
ようにすると良いです。
「直角ぎみ」に交差をさせた後は、ぐいっと曲げてきちんと折り返してはね出すようにした後、ペンの動きをゆっくりにして徐々に紙から離れていって「ハネ」ると良いです。
お手本のような「き」ではこのように折り返してハネるようにしますが、こんな書き方もアリです。
この書き方は、平安時代などの「仮名」という「ひらがなのプロトタイプ」みたいな書体で、ほとんどこんな「折り返さない書き方」です。
ぶっちゃけて言いますと、こっちの「折り返さないだけ」の書き方の方が速く書けますし、私自身もお手本みたいな書き方はあまりしないです。
実際こう書いている人の方が多いかもしれませんし、普段のメモ書きやノートを取るときなどに書くときは、こっちの方がおススメです。
4画目は包みこんで字を整える気持ちで
最後の4画目ですが、
4画目は包みこむように書いて、「き」の字を整えるような気持ち
で書くと良いです。
・3画目からの動きを止めないで自然に受けてスッと入って
・中に空間を意識しながら、包みこむように
・「き」全体の字のバランスを見ながら書き進めて
・最後はちょっとだけ戻して止める
ような流れで書くと良いです。
特に「き」はタテ長の字になりますので、最後の4画目の長さや位置で微調整をするような気持ちで書くようにすると良いです。
「き」は「幾」漢字の成り立ち
ひらがな「き」の書体の流れは以下のとおりです。
「き」の元になった漢字「楷書」は「幾」です。
幾何学もようとかの「幾」という字ですが、「幾」の字だけではなかなか馴染みの薄い字だと思います。「機械」の「機」の右っかわの字というとまだ馴染みがあるでしょうか…?
「幾」という字は、
【字義】
一、
①きざ‐し。けはい。まえぶれ。「幾微」
②かすか。また、おだやかに。それとなく。「幾諫」(キカン)
③あやうい(危)。
④ほとん‐ど。㋐すんでのことに。㋑あらかた。大体。
⑤ちか‐い(ちかし)。=近(11775)。「庶機」
⑥こいねが‐う。こいねが‐わくは。ねがう。「庶機」
二、
いく。いくばく。
【解字】
会意。幺幺+戍。幺幺は、こまかい糸の象形。戍は、まもるの意味。戦争の際、守備兵の抱く細かな心づかいのさまから、かすかの意味や、あやういの意味を表す。
「新 漢語林 米山寅太郎 蒲田 正 著」
というように字典には載っています。
幾何学もようの「幾」は大体とかいう意味で、ほかに「けはい」とか「まえぶれ」という意味があります。
「こまかい糸」に「兵隊さん」という字を組み合わせて「幾」ということで、兵隊さんは生きるか死ぬかの場所で戦っていますから、
当然、少しのことにも敏感になっていなければいけないわけで、そういった人たちの気持ちを表す字だと言えます。
ひらがな「き」は草書(そうしょ)の「幾」からきていますが、「き」の1画目は草書(そうしょ)では「幺幺」の部分が点々をになっていて、そこをつなげていたり、
「き」の3画目のくいっと曲げて「ハネ」るトコロも共通する部分があります。
ムズカシイと言われるひらがなですが、ルーツとなる草書(そうしょ)のカタチを知ることもコツを得るヒントになります。
楷書・行書それぞれに合わせるには
楷書(かいしょ)と行書(ぎょうしょ)に合うひらがな「き」を考えた場合ですが、
・「楷書」は「直線的」に
・「行書」は「曲線的」に
です。
あんまり変わりませんが…そういった気持ちで書くことが大事です!。。
ヨコ書きの「き」を考えた場合
ひらがなでは問題になるヨコ書きを考えた場合ですが、
ひらがな「き」の場合、ひらがな「さ」と同じように最後の画が右下に向かって終わる字なので特に問題なく書けると考えます。
最後を少し右めに出すようにして、右へ右へとつながるようにしていくと流れが出て良いと思います。
まとめ
- シルエットはタテのだ円形
- 1画目・2画目は少し右上がりに
- 1→2画目の「見えない画」を意識
- 3画目の前半は1・2画目と直角ぎみに交差
- 3画目の後半はきちんと折り返してハネる
- 4画目は包みこんで字を整える気持ちで
ひらがな「き」は、なんともバランスと取りづらい字ですが、一番の極意は交差する部分の「直角ぎみ」を意識することにあります。
それは自然と、書くときの空間になる白い部分をどう残すか?につながってきますので、「き」に限らずぜひ普段から意識して書くようにすると良いです。
ひらがな「き」解説動画
実際に書いている所の動画をご用意しました。
文字の形も、もちろん大切ですが、ペン先の微妙な動きにも注目していただけるとありがたいです。
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