穂先という、筆の中で一番長い毛の部分=命毛(いのちげ)が、
線の外に出ないように書く。
このことは恐らくは聞いたこともないかと思います。
私は最近、篆書(てんしょ)という原初の漢字を本格的にやるようにしているのですが、
やりはじめてそうではないのか?
という事に気づき始めてきました。
篆書は穂先を絶対に出して書いてはいけない文字です。(なのでハネ・ハライが無い。)
筆の中で一番長い毛の部分=命毛(いのちげ)が線のほぼ中心を通る書き方、
「中鋒(ちゅうほう)」と言いますが、
その中鋒成分が100に近い状態で、どの線も書かなければなりません。
私は本当に美しい文字というのは、篆書の線の引き方をマスターしてこそと密かに思っているのですが(なので全ての書体をまんべんなくやるようにしています。)、
この線の引き方で、楷書や行書、草書を書くようにすると、また一段上の書が書けるようになると感じます。
書道をする方は、得意な書体だけをやるような傾向があると思います。
楷書から始めて、行書・草書をするというのは一般的です。
気を付けないといけないのは、
「隷書・篆書は書体やフォントの違いではない」
という事。
線の並べ方は時代とともに変化しても、
線の引き方だけは千年変わらない、
という言葉があります。
この不変である線の引き方を理解するためにも、篆書をやってみること。
何も大きな作品を書いたり、専門的な知識を勉強する必要はありません。
有名で好きな篆書を臨書するようにするだけでも良いと思います。
少しずつてもそうしていくことで、
「穂先を出さないことが書の奥義」
という事が実体験として理解できるようになると思います。
ぜひ、篆書もやってみる事をオススメします。
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